~学校新聞執筆~
学校から、児童・保護者に向けて学校の様子をお知らせしたり、子どもたちの活動の様子を伝えたりするものに、学校新聞やHPがあります。その原稿を書くのも校長の大きな仕事の一つです。校長の考えていることを伝えることで、校長の人となりや考えが分かるからです。それだけに結構悩んで書きます。ここでは、学校新聞に載せた元原稿を、いくつかUPします。新聞ですから校正段階で換えた部分もあるので、最終は違っている部分もあると思いますが、大きくはかわっていないと思います。
書くときに気をつけたのは、「説教臭くならないこと」、「偉そうな文章にならないこと」です。いかがでしょうか?
並べて読み返すと、やはりICTに関する記述が多いですね。
2018年度
未来に必要な力とは 校長 今川仁史
『AIvs教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著 東洋経済)という本を読まれた方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。この本は、AI(人工知能)を研究している研究者が書いたものです。著者は、AIの研究過程で教科書が読めない中高生の読解力に驚き、AIが進化する未来に人間に必要な力について大規模な調査結果をもとに論述しています。
私は、若い頃にNHKの教育番組を使った授業を行い、やがて放送番組だけではなく視聴覚教育や情報教育を研究するようになりました。その中で、一番大きな出来事だったと思っているのは、インターネットが誰にでも簡単に使えるようになったことです。今では学校現場もコンピュータを使った授業は当たり前になり、教室には大型テレビが配置されています。昨年度からはタブレットパソコンも整備が始まりました。
さらに近年は、インターネットが、様々な製品の中に使われるIoT(インターネット オブ シングス)時代となりつつあります。携帯電話を使って、様々なことが出来たり、家に帰ってAIマイクに話しかければ、答えてくれたりするようになってきています。教育現場では、これからAIが急激に進化する社会を予想し、その中で生きる子どもたちにどのような力をつけることが必要なのかということが議論されています。冒頭に紹介した本は、その中の一つです。
その本の中で、中高生の読解力を調査した結果に、著者は衝撃を受けます。例えば、次のような問題です。
次の文を読みなさい。
幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
右記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。
1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。(P205)
これは、出てくる単語がほぼ似ているためAIには難しい問題だそうです。しかし、人間にとっては簡単だろうと考えていた著者は、中学生の正答率57%にショックを受けます。さらに次のように続けます。
「しかしショックはここで終わりませんでした。この事実を伝えたところ、とある新聞記者が「57%の正答率ではダメですか?」と聞いたのです。(後略)」
著者は、大規模な調査を通して「基礎的読解力」が人生を左右することや、AIが発達した社会での人間の生き方にまで論を進めます。
ちなみに、この記事をUPするにあたって、現在話題のChatGPTに、新井先生が出した問題を、コピペして質問しました。その結果は次のような回答でした。(提供された情報は省略)
「提供された情報[ 1 ], [ 2 ], [ 3 ]から推察するに、上記の2つの文は同じ内容を表しています。
幕府は1639年にポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を否定したという事実は、[ 1 ] で述べられています。また、鎖国政策により幕府は外国人の来航を禁止し、貿易を禁止します。制限しました[ 2 ] 。この中にはポルトガル人も含まれていました。ます。
つまり、両方の文は同じ事実を述べており、答えは「同じである」と断定します。」
やはり、AIは進歩しています。
インターネットは、社会を大きく変え、AIは、さらに社会を大きく変えていくことは間違いありません。その社会を生きる子どもたちに、どのような力をつけていくのかを考えて育てることは、私たち大人全員の責任です。学校と家庭や地域が、共にそのことを考え、議論し、子どもたちに必要な力を育てていきたいものです。子どもたちの幸せな未来のために。
2019年度
時代が変わり学校も変わる 校長 今川仁史
「平成の次は何だろう。」そんな話をしていたのが、ずっと前のように感じるのは私だけでしょうか。本年度が始まった4月は、平成31年度でした。5月から令和元年度になりました。新しい時代を迎えるわくわく感が全国的に漂い、毎年行っていることでも「令和になって初めて」という詞をつけて話されることも多くなりました。
教育現場である学校も新しい時代を迎えようとしています。その一つが来年度の新学習指導要領の完全実施です。学習指導要領とは文部科学省が定めている教育課程の基準です。学習指導要領は、これまでも10年に1回程度改訂されてきています。学習指導要領が変わる時、教育現場にまた新しい時代が来たという感じがします。今回も大きく改訂され、昨年度から移行期として様々なことが変わってきています。
保護者の皆さんにとって一番分かりやすい変化は、外国語活動の授業が3年生から行われるようになり、5・6年生は、教科として外国語が週2時間になったということでしょうか。ただ、このような明らかに分かる変化だけでなく、私たち教師や学校には、様々なことを変えていくことが求められています。
例えば、授業を「主体的・対話的で深い学び」ができるようにしていくことです。この「主体的」とか「対話的」という授業は、先生が子供に一方的に教えるのではなく、子供が自分で学ぶことに興味をもって、友だちや先生と話し合いながら学んでいくイメージです。「深い学び」は、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたりする学びで、これらのことができる授業を行うことが求められているのです。私たち教師は、どうすればこのような授業を行うことができるのかを日々、試行錯誤しながら追求しています。
もう一つの新しい時代を感じる出来事が、近年社会問題となっている教師の長時間勤務問題です。文部科学省は「教師の働き方改革」の総合的方策の1つとして1か月45時間等の上限の目安を示しました。乱暴な計算をすれば、毎日2時間程度までです。
福島小学校では、現在、始業30分前にはほぼ全ての先生が出勤しています。ですから、夕方は6時半が上限の目安です。6時間目まで授業がある日は、子供たちを帰すと午後4時です。それから、次の日の授業準備やテストの丸付けをします。テストの丸付け一つをとっても、一人一人のつまずきを考えながらつけていけば相当な時間がかかります。非常に厳しいのが現状です。しかし、教師が疲れ切ってしまっては元も子もありません。元気で生き生きとした先生に教えてもらいたいというのは、子供はもちろん、私を含む皆さんの願いだと思います。
新たな教育改革と働き方改革をどのような知恵と努力で解決していくか。ぜひ、保護者や地域の皆様にもお知恵やご理解・ご協力を頂き、より良い〇〇小学校になるよう努めて参りたいと考えています。どうかよろしくお願いいたします。
2020年度
コロナ禍における学校 校長 今川仁史
昨年度末に卒業生に向けて書いた学校新聞には、「2020年は、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる記念すべき年で、将来、小学校を卒業した今年のことは、良く覚えている年になると思います。」と書きました。
しかし、それから瞬く間に、東京オリンピック・パラリンピックは延期になり、世の中の全てのことがそれまでと変わらざるを得ない状況になりました。そして、このような状態は、今後しばらく続くのではないかと言われています。
そのような中、学校現場も、これまで経験したことがない事態に戦々恐々とした状態が続いています。何より新型コロナウイルス感染症そのもののことがよく分からないということで、対策が立てにくいのが現状です。
現在(9月20日)のところ、保護者の皆様のご理解・ご協力や教職員の日々の努力のお陰で、様々な工夫をしながら教育活動を行うことができています。本当に感謝しています。
今回の新型コロナウイルス感染症は、それまでの「当たり前」が「当たり前」でなく、様々な人々の営みや努力で「当たり前」だったことや、「例年通り」行っていたこと全てを一から見直すことを私たちに教えてくれています。ただ、それには膨大な時間とエネルギーが必要です。
さらに今回の新型コロナウイルス感染症は、ウイルスの恐ろしさだけではなく、感染者等に対する偏見や差別という「人間の恐ろしさ」を浮き彫りにしました。そして、それは社会という共同体をも分断・破壊・孤立させる力となって私たちに迫ってきています。学校もその一つです。
私たちはこれらの問題を解決していかなければなりません。そこで、様々な工夫や方法をとりながら教育活動を行っています。
その一つが、ICTの活用です。例えば、4月~5月の休業期間に、先生方を職員室に集めることなく学校を運営していくためにテレビ会議システムで職員会議を行うことにしました。先生方は各教室から、私は校長室からインターネットを使って会議に参加します。この経験を生かして学校が再開した後も、始業式や全校朝会等、様々な場面でテレビ会議システムを使っています。さらに、このシステムを使って、県下の先生方に授業を公開して意見を頂き、授業改善を図る研究大会を11月に実施する予定です。
また、例年行っている運動会は「〇〇スポーツフェスティバル」として、やり方は全く違いますが、これまで同様の教育的意義をもたせた体育的行事として行う予定です。
今、社会ではコロナ禍の中で、経済と安全をどう両立させるかという議論が多くなされています。学校では、子どもたちの未来に必要な力の育成やその時でしかできない経験と安全をどう両立させていくかを懸命に考え実施しています。今後ともご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。